ファイナンシャルプランナーに聞く お金と幸せの大事な関係
公的年金を「ゆるく信じる」と
あなたのウェルビーイングが上がる?
長生きしても安心な終身年金の仕組み
去る7月3日、国の年金財政検証結果が公表されました。5年に一度行う年金財政の将来見通しのシミュレーションです。ニュースで見て記憶のある方もいるでしょう。
国の年金と言えば「どうせもらえないだろう」とか「負担ばかり増やそうとしている」とか、悪いイメージのほうが多いかもしれません。
しかし、本当に年金制度は悪いものでしょうか。みなさんの祖父母、あるいはリタイアした両親は、国の年金制度で生活をしていると思います。「もうちょっと多いといいなあ」と思っている人は多いでしょうが、多くの場合は日常生活を営むくらいの金額が支給されています。
しかも終身年金の仕組みですから何十年長生きをしたとしても年金はもらい続けることができます。長生きしたときの大きな不安である「死ぬまで生活費がやりくりできるか」は国の制度が完全に支えてくれています。
90歳あるいは100歳になった祖父母がもしいらっしゃれば、総受取額は相当の金額になっているはずです(使ってしまうので何千万円ももらった実感はありませんが)。
年金制度の安定性は現実、確保できている
日本では65歳になれば仕事をしなくてもなんとかなるくらいの年金が支給されますが、実は世界的には67歳あるいはそれ以上になって支給される国のほうが多数派です。日本は世界トップクラスの長寿国なのに、世界トップクラスで早く年金受取りができる国でもあります。
マスコミを見ると年金不安をあおるような記事が多いですが、今回の検証結果はむしろ制度の安定性が確保できているという数字になっています。確かに経済成長率が何十年もマイナスなら年金制度も苦しくなりますが、それはもう国全体の問題であって年金制度だけの問題ではありません。
今回、こういう話をしたのは国の政策については「ゆるく信じる」ほうが、私たちは幸せになれるのではないか、と思うからです。
社会や地域に対して、ゆるやかな信認があったほうが、人生の幸福度は高まります。隣人や国のことをすべて疑っていては息が詰まります。もちろん問題点は指摘し改善する必要がありますが、火のない所に煙を立てて不信感を高めているならおかしな話です。年金については割とそういうところがあります。
年金が多くなるかはあなた次第
実は、年金運用はうまくいっているし、年金積立金は枯渇しません。高齢化が進んでも働く人と年金受給者のバランスは予想以上に好転しています。
「国だって、そうバカなことはしないだろう」「自分の年金がちゃんと積み上がっていて将来もらえるならいいじゃないか」くらいに考えてみてはどうでしょうか。そのほうが気持ち的にはずっと楽だと思います。
それに、あなた自身がたくさん年金をもらう方法は、実はしっかり長く働くことです(長く、多く保険料を納めた人はそうでない人より厚生年金額は大きくなる仕組みのため)。国ではなく、自分自身の人生が自分の老後を支える原動力でもあるわけです。
個人ごとの加入履歴や将来の見込額は、ねんきん定期便とねんきんシミュレーターで確認できます。ぜひ確認をしてみてください。
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profile
フィナンシャル・ウィズダム代表
山崎俊輔 氏
特に確定拠出年金とリタイアメントプランに強いファイナンシャルプランナー、消費生活アドバイザー。年金教育家、投資教育家として執筆・講演を通じて活躍中。わかりやすさと親しみやすさ、ユニークな視点に定評があり、講演についても柔和な語り口が好評を博している。
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